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この設計図は作成の途中です。内容は今後変わります。数字は出典を確かめたものだけを載せています。

経済・お金・仕事

税・社会保険料

社会を作り直すと決めたとき、最初に見つけないといけないのが、所得と負担の決まり方です。

所得を決めるルールがあり、負担を決めるルールがあります。

そのルールが、人ごとに違う結果をつくっています。

「お金が足りない」「負担が重い」「貯められない」。

この話を、個人の努力不足で片づけるのではなく、制度の問題として見ていきます。

新社会が見るのは、三つです。

1. その収入を、なぜその水準に決めているのか

2. その負担を、誰が、どの無理で払っているのか

3. いちばん所得が少ない人に、毎日は成り立っているのか

何を解決したいのか

「所得が足りない」と言います。この言葉には、理由が入っていません。

足りないのは、能力のせいでも、運のせいでもありません。

入る金額も、出る金額も、受け取るタイミングも、制度として決まっているからです。

今の社会でお金について起きていることを、少し具体的に並べます。

  • 名目工资は上がっているのに、実質は下がっている(実質賃金が4年連続マイナス)
  • 所得の低い層ほど、税金と社会保険料の割合が大きい
  • 働く环境和がない期間に、生活を維持するための直接の支払いがない
  • どれか一つだけ変えると、ほかのどれかが崩れる

これらは、それぞれ別の問題に見えます。

けれど、同じ構造から出ています。

所得を「働く時間」だけで決めている、という一点です。

働く時間が決まれば、所得も税金も保険料も決まる。

だから、働く時間を動かせば、全部が同時に動きます。

新社会は、この連動をどこまで切り離せるかを問います。

切り離せないなら、数字を同時に設計し直します。

現在の社会ではどうなっているか

全体の大きさ:国民負担率

制度の大きさを測る物差しが一つあります。

国民負担率。租税負担と社会保障負担を合わせた、義務的な公的負担が国民所得に占める割合です。

ここに国と地方の財政赤字を加えたものが、潜在的国民負担率です。

| 年度 | 国民負担率 | 潜在的国民負担率 |

|---|---|---|

| 令和6年度(実績) | 46.7% | 50.3% |

| 令和7年度(実績見込み) | 46.1% | 49.1% |

| 令和8年度(見通し) | 45.7% | 48.4% |

出典:財務省「令和8年度の国民負担率を公表します」(2026年3月5日)

https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/20260305.html

比率だけ見れば微減しています。

ただ、潜在的国民負担率という欄は 50%近く に張り付いています。

まだ到来していない借金の返済分を、今の比率に足した数字だからです。

次の世代に回した分が、今、表示されています。

比率そのものは国によって異なります。

他国と並べて「高いか、安いか」を比べるのとは、別の手直しです。

ここで言えるのは、じぶんの国での位置だけです。

税収の内訳

令和7年度(2025年度)の一般会計税収は 84兆2,226億円。6年連続の過去最高でした(前年比112.0%)。

| 税目 | 決算額 | 前年度比 |

|---|---|---|

| 消費税 | 26兆278億円 | 104.0% |

| 所得税 | 25兆2,565億円 | 119.1% |

| 法人税 | 21兆7,450億円 | 121.4% |

| 相続税 | 3兆8,593億円 | 108.6% |

出典:財務省「令和7年度一般会計税収の予算額と決算額(概数)」(2026年7月3日公表)

https://www.kannaikaikei.jp/news/16181

単一の税目としては、消費税が最も多く、所得税を上回りました。

この2つで一般会計税収の約6割です(26.00兆円+25.26兆円=51.26兆円。84.22兆円に対する割合は約60.9%。この割合の計算は この設計図側の試算です)。

所得税が19.1%と大きく伸びたのは、前年度に定額減税していた反動です。源泉所得税が前年比122.8%になっています。

所得が増えたのではなく、前年に引いていた分が戻ってきた、という読み方ができます。

この表から読み取れる構造は、こうです。

日本の税制は、所得に課す部分と、消費に課す部分が、同じくらい大きい。

ただ、この2つは性質が違います。

所得の側には progressive な刻みがあります。消費の側には、刻みがありません。

この非対称性が、以下の「見えにくい負担」の多くを説明します。

所得税の刻み

所得税は、課税される所得について 5%から45%までの7段階の超過累進税率 で課税されます。

5%、10%、20%、23%、33%、40%、45% です(国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」)。

超過累進とは、所得を7段階に区切り、その区分に収まる金額にだけ、その区分の税率をかける 方式です。

境をまたいでも、それまでの税はゼロには戻りません。

「所得の全部に45%がかかる」わけではありません。

これに 個人住民税(地方税)の所得割 が加わります。個人住民税の所得割は 一律10% の比例税率です。

出典:国税庁 タックスアンサー No.2260

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

/財務省「所得税の税率構造」

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/b02_1.pdf

財務省の同資料によると、最高税率の45%が適用され始める給与収入は、夫婦子2人(片働き)で4,473万円 です。

単身のケースでは、もっと前の額から45%になります。

つまり、45%ラインに触るのは、绝大多数ではありません。

1億円の壁

累進税率の刻みが、一部で途切れます。

合計所得金額が1億円を超えると、負担率が下がる。これが「1億円の壁」です。

理由は、所得の構成です。

給与所得などは45%までの累進で課税されます。

一方、株式の譲渡益や不動産の譲渡益は、分離課税で一律20.315% です。

高所得者ほど、所得の中にこの「税率の低い部分」が混ざる割合が高くなります。

所得を増やしても、平均的な税率が下がる。

2025年分から「極めて高い水準の所得に対する負担の見直し」(ミニマム課税)が入りました。

合計所得金額から非課税枠3.3億円を差し引いた金額に22.5%をかける計算を比較し、通常の所得税を上回るときに、その差額を納める仕組みです。

政府資料によると、令和9年分(2027年分)の所得からは、非課税枠を1.65億円、税率を30%に引き上げる 方針です。

出典:財務省主税局 資料(2026年5月20日)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/startup/dai4/shiryou5.pdf

方向としては、高所得の負担を強める方向に進んでいます。

ただ、これで「所得の再分配の骨組み」が直ったわけではありません。

1億円の壁は、累進税率の刻みと分離課税の組み合わせから生まれています。

片方だけの見直しで、「所得が多い人に税率が高い」状態が完全に実現するわけではありません。

分離課税そのものをどう扱うかは、まだ決まっていません。

給与所得控除

給与所得では、収入から給与所得控除を差し引いて所得を計算します。

この控除には 最低保証額 が定められています。

令和7年度税制改正で、最低保証額は 55万円から65万円に引き上げられました(令和7年分以降の所得税に適用)。

同じ改正で、同一生計の配偶者や扶養親族の「合計所得金額」の要件も 48万円以下から 58万円以下に引き上げられています。

出典:令和7年度税制改正の大綱(2024年12月27日閣議決定)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/20241227taikou.pdf

方向としては、所得控除を厚くして、中・低所得の税負担を下げる方向に進んでいます。

ただ、控除は 「所得があったとき」しか効きません。

所得がゼロに近い人には、控除を増やしても何も起きない。

これは後の設計で効いてきます。

消費税

消費税の標準税率は 10%(国税7.8%+地方2.2%)、軽減税率は 8% です。

軽減税率の対象は、酒類と外食を除く飲食料品、および週2回以上の定期購読新聞。

出典:国税庁 タックスアンサー No.6102「消費税の軽減税率制度」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6102.htm

/財務省「消費課税(国税)の概要」

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d01.htm

消費税の税率には progressive な刻みがありません。

同じ額を使う人なら、所得の多少は関係ありません。同じ10%です。

問題は、税率ではなく 課税範囲 にあります。

日本の消費税では、次のようなものには基本的に課税されません。

  • 住宅の家賃
  • 医療サービス(保険診療の範囲)
  • 学校の授業料
  • 社会保険料そのもの
  • 給与そのもの
  • 分離課税の対象となる金融所得の一部

課税されるのは、支出のうち課税される部分だけです。

課税されない支出は、「使っていない」のではなく、「税の対象外」。

ここが、負担の計算を難しくしています。

定額減税

令和6年分から、所得税に 定額減税 が行われました。

本人に3万円、同一生計の配偶者と扶養親族1人につき3万円(個人住民税は1万円)です。

対象は、令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の居住者(給与収入のみの場合は収入2,000万円以下)。

出典:国税庁「定額減税と確定申告」

https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/kakutei.htm

効果は数字に出ています。

令和6年分の確定申告で「申告納税額がある人」は 517万人(前年度比▲22.6%)。

「申告納税額がない人」は 468万人(前年度比+53%)。確定申告を行う人全体は 2,339万人です。

出典:国税庁「令和6年分所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」(2025年5月27日)

https://www.nta.go.jp/topics/pdf/0025005-063.pdf

つまり、実際に税金を払った人は、確定申告をする人の4分の5に満たない(517 ÷ 2,339 ≈ 22.1%。この割合は この設計図側の試算です)。

この数字の読み方には、注意が必要です。

減税の対象となったのは、「所得があっても、納める税額を支払える人」 だったからです。

定額減税の減税額を使い切れた人と、所得が足りず対象外になった人が、混ざっています。

「減税で負担が軽くなった」とは、そのまま言えない数字です。

社会保障の規模

2026年度予算ベースでは、社会保障の給付のうち 公費が56.6兆円。

このほか、福祉その他が35.8兆円、介護が14.3兆円、こども・子育てが12.1兆円です。

出典:厚生労働省「社会保障の給付と負担の現状(2026年度予算ベース)」

https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001706348.pdf

社会保障の財源は、税金だけではありません。

社会保険料(年金・医療・介護・雇用保険)の保険料が、大きな割合を占めます。

この保険料は、給料から直接引かれます。

所得税と似ていますが、「所得のある人」だけがかかる 点が違います。

後の「見えにくい負担」で詳しく触ります。

最後の線:生活保護

生活保護は、収入が基準額に満たない人に、差額を渡す 制度です。

世帯を単位として、預貯金や不動産を使い、能力を使い、親族の支援を使っても、基準に届かなければ保護がされます。

出典:厚生労働省「生活保護制度」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html

基準額は、要保護者の年齢・世帯人員・地域の級地ごとに定められています。

1級地1・20〜40歳の単身世帯では、生活扶助基準額の内訳は次のとおりです(2026年4月1日適用)。

  • 第1類(食費・被服費など、個人の費用):46,930円
  • 第2類(光熱水費など、世帯共通の費用):27,790円
  • 合計:月額74,720円

出典:厚生労働省「生活保護法による保護の基準」

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82051000&dataType=0

この74,720円に、住宅扶助(家賃)や医療扶助が別に加わります。

一方で、世帯で活用できるものはすべて先に調べます。

申請の負担があります。申請しないまま、困窮が続いていく圧力もあります。

生活保護は、金額だけ見ると「最低」の線です。

ただ、この線の前後に かなり幅があります。

その幅が、実際の生活体験の深さになります。

いま動いている方向

2026年8月5日、政府は「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を閣議決定しました。

同年9月15日には、飲食料品の消費税率を引き下げる大綱が閣議決定されています(関連法案は国会に提出中)。

出典:内閣官房「『給付付き税額控除』の制度導入の基本方針」(2026年8月5日閣議決定)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokuminkaigi/contents/20260805/01_sirou1.pdf

中身は、おおむねこうです。

  • 本格導入は 令和11年度(2029年度)。個人単位で、中低所得の現役勤労者が対象
  • 勤労性の所得には、給与所得・事業所得に加え、業務に係る雑所得(フリーランス)も含む
  • 給付額は所得に応じて逓増させ、その後は定額。総所得が一定額を超えると逓減・消失
  • 18歳以下のこどもの人数に応じた加算あり
  • 「年収の壁」に当たる人への加算を、時限的な措置として設ける
  • 導入までの2年間は「つなぎ」として、2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を1%に

財源は、特例公債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直しで確保する方針です。

この方向は、そのまま「制度をどう設計するか」という問いに近いです。

だから、後で自分の案と並べて書きます。

見えにくい負担は何か

制度の話は、控除と税率の計算で説明できます。

ただ、実際の生活では、負担はもう少し複雑に絡んでいます。

見落とされがちなものを、並べておきます。

1. 課税されない支出がある

すでに述べましたが、家賃や医療や社会保険料は消費税の対象外です。

つまり、家計支出のうち相当な部分が、消費税の計算から抜けている。

「消費の10%を払っている」と言うとき、

その10%がどの支出に乗っているかで、実際の感じ方はまったく違います。

同じ100万円の支出でも、家賃が多い三口之家と、食費や光熱費が多い単身世帯では、税額が変わります。

所得の低い人ほど、課税される支出の割合は高くなります。

2. 控除や減税の要件が、受益できる人を限定している

控除や減税は、原則として「所得がある人」の武器です。

そして、その所得が「税額を支払える範囲」に届いている必要があります。

定額減税がその例です。

令和6年分では、合計所得1,805万円以下(給与のみなら収入2,000万円以下)が対象でした。

でも実際に税額を支払える範囲まで所得があった人が対象でした。

それより所得が少ない人は、納める税額がないために減税の対象外になりました。

結果として、令和6年分の確定申告で「申告納税額がない人」が468万人に増えています。

つまり、減税されたことと、暮らしが楽になったことは別です。

所得の少ない人ほど、減税の対象から外れていく。

この構造を「給付の側に移す」のか、「控除の側に残す」のか。設計の判断に直結します。

3. 社会保険料は、所得のある人にだけかかる

社会保険料は、所得税と計算方法が違います。

所得のある人だけがかかる、という側面が強い。

年金保険料は、今払った分が将来の年金になります。

医療や介護の費用は、現物で受け取る給付です。

どちらも「消費した分」とは別の性質があります。

負担と給付が時間軸でずれているので、体感としては「引かれているけど、戻ってくる時期が分からない」ことになります。

感覚だけでは気づけません。数字で見ます。

2025年(令和7年)の実質賃金は前年比▲1.3%で、4年連続のマイナスでした。

名目の現金給与総額の月平均は35万5,941円(前年比+2.3%)です。

一般労働者では46万5,923円、パートタイム労働者では11万4,527円でした。

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査2025年分結果確報」(2026年2月25日公表)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/25cr/25cr.html

4. 手続きのコストが、金銭以外の負担になる

税を納めるには、確定申告が要ります。

各種の給付や減税を受けるには、申請が要ります。

生活保護を受けるには、資産調査と扶養照会があります。

金額は小さいまま、手間と時間はかかります。

その時間を取れない人は、給付を受け取れません。

誰が負担しているか

制度を設計するときは、「誰が負担するのか」を必ず書きます。

負担が見えない制度は、まだ設計が終わっていない。

税の種類ごとに、負担する人が違う

  • 所得税:その人の収入から引かれる
  • 消費税:その人が買う商品とサービスにかかる
  • 法人税:会社の利益にかかる
  • 社会保険料:給料から直接引かれる
  • 国債:将来、返済が要る
  • 地方債:将来、返済が要る

国債と地方債は、負担を将来の世代に移す仕組みです。

税金は、世代の中で負担し合います。国債だけは、次の世代に回します。

所得の再分配を、数字で見る

2026年4月6日、内閣官房の資料が「純負担率」の国際比較を示しています。

純負担率とは、(負担額−給付額)を世帯年収で割ったものです。

出典:内閣官房 人口戦略本部・全世代型社会保障構築本部事務局「第1回有識者会議のご指摘を踏まえた 純負担率の分析」(2026年4月6日)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokuminkaigi/contents/20260406/02_siryou2.pdf

この資料から、要点は三つです。

  • 世帯年収が一人当たりの平均年収より下の場合、負担の最大割合は社会保険料。個人住民税と消費税も一定の割合を占める
  • 一部の収入帯を除いて、日本の純負担率は主要国より低い
  • 比較の前提として、年金保険料は負担に計上されるが、将来受け取る年金給付は含まれない

三つ目が重要です。

「純負担率が低い」ことは、「トータルの負担が軽い」ことを意味しないからです。

将来受け取る年金が、差し引きに入っていない。

この資料が示しているのは、「低所得の現役世代が、比較的大きい割合を負担している」という構造です。

そして、その重さを軽減するために、給付付き税額控除が計画されている。

ただ、この資料の推計は、設計の候補之一として読むべきものです。

採用の判断は、まだ行っていません。

現在の制度のメリット

制度全体を設計ミスとして処理すると、判断が楽になります。

所得の格差を、ゆるやかに圧縮している