経済・お金・仕事
経済(賃金・雇用区分・物価)
経済の話は、数字が多くて遠く感じられがちです。でも、毎月の「給料が上がったのに楽にならない」という感覚は、ほとんどここに根っこがあります。
どのページも同じ順番で書いています。日本の今 → 困っていること → 改善案 → 比べてみる → 見込めない点 → 実現の道筋。いまの制度は「出発点」であって、「制約」ではありません。世の中の常識や前例に合わせるのではなく、困る人がいちばん減る形を基準に、変える幅も自分で決めて提案します。
1. 日本の今
- 2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円(前年度比56円増)と報じられています(労働新聞社)。
- 都道府県で差があり、報道では最高の東京が1,280円、最低の宮崎が1,085円で、195円の開きがあるとされています(単一の報道ベース。厚生労働省の公表値と照合してから引用してください)。
- 実質賃金は2026年に入ってから、月によって増減はあるものの、おおむねプラスで推移しています。第一生命経済研究所の分析では、7月は前年比+2.4%でした。一方で、食品の値上げや電気・ガス代の上昇で、秋以降に再びマイナスへ戻るおそれも指摘されています。
2. 困っていること
- 賃金が上がっても、生活費の上がり方が先に来る。食費・光熱費・家賃は、削りにくい支出です。
- 地域で賃金の水準が違うのに、生活コストは同じ割合では下がらない。地方で最低賃金が低いほど、都市との差が埋まりにくくなります。
- 小さな会社が、人件費の上昇を価格に載せにくい。最低賃金の引き上げが、取引先への値上げ交渉とセットで進まないと、小規模の事業者に負担が寄ります。
- 同じ仕事でも「正規」「非正規」という区分だけで、賞与・昇給・安定性・保険が変わる。雇用者の3人に1人以上が非正規で、この区分が賃金の差と不安定さの大きな原因になっています。
3. 改善案
案1:正規・非正規の区分を廃止する。全員を社員にして、報酬は時給で払う
「正規」「非正規」「派遣」「アルバイト」という区分は、仕事の中身ではなく、雇う側の調整弁として作られた線です。直したり低くしたりせず、なくします。
仕組み
- 働く人は全員「社員」。正社員・パート・アルバイト・契約社員という呼び分けを、制度から消します。
- 時給の賃金表を、会社が公開する。時給=仕事の基本額+経験の加算+資格の加算。月給制の会社も、時給に換算して公開します。
- 責任と仕事の内容は、時給に上乗せする「手当」で払う。雇用区分ではなく、実際に負っている責任と、仕事の中身で差をつけます。手当はすべて時給に加算する形なので、短時間の人にも働いた時間分だけ同じ割合でつきます。
- 責任手当:人の指示・シフト管理・採用・評価を担う人は時給の10〜30%(人数や責任の範囲で段階を決める)。
- 専門・業務内容手当:資格が必須の仕事、危険や重労働を伴う仕事、判断の重い仕事は5〜25%。
- 時間帯手当:深夜(22時〜5時)と休日は25〜35%。
- どの手当も、賃金表に項目と割合を書いて公開します。手当を受けるには、責任や仕事内容が文書で決まっていることが条件で、肩書きだけでは付きません。
- 賞与と退職金は、時給の総額に対する積立で払う。会社は、社員ごとの積立口座に、賞与用として時給総額の8%、退職金用として4%(提案値)を毎月入れます。週10時間の人も週40時間の人も同じ計算です。
- 有給休暇は、20時間働くごとに1時間(約5%)(提案値)。働き始めから積み上がり、「半年勤めたら」という条件を置きません。
- 社会保険は、1時間目から全員加入。保険料は時給総額に比例し、会社負担の割合も全員同じです。「週20時間以上」「年収130万円」のような線をなくします。
- 解約の予告期間は勤続で決める。勤続1年未満は30日前、以降1年ごとに10日ずつ延び、上限90日(提案値)。予告に足りない日数は、その分の賃金を払います。
案2:調整のコストを、雇う側が払う
これまで非正規が担ってきた「忙しいときだけ使う」調整を、人に押しつけない形にします。
仕組み
- 勤務開始まで72時間を切ってからのシフト追加・変更は時給25%増し、24時間を切ってからは50%増し(提案値)。
- 呼び出しに備えて待機してもらうときは、待機時間に時給の50%を払います。
- 決まっていた勤務を会社の都合で取り消すときは、予定の時間の60%を払います。
- シフトは、2週間分を前もって知らせます。
案3:最低賃金は全国一律にし、生活費から決める
賃金の地域差(報道では約195円)は、生活費の差を埋めていません。賃金に地域差を付けるのをやめ、地域で違うのは住居の費用なので、それは住まいの側で調整します。
仕組み
- 独立した統計機関が、食費・光熱費・通信費・交通費・住居費の「最低限の生活費」を毎年計算して公表します。
- 最低賃金=その月額 ÷ 月の標準労働時間(160時間)。この式で、毎年自動で決まります。
- 決まった額が前年より大きく上がる場合は、3年に分けて段階的に引き上げます。
案4:賃上げの分を、取引先が価格に反映する
仕組み
- 最低賃金が上がった年は、下請けから価格交渉の申し出があったら、発注側は30日以内に協議に応じる義務を負います。断った記録は公表されます。
- 協議なしに、人件費の上昇分だけ発注額を据え置いた会社は、公正取引委員会が公表します。
案5:働くか働かないかは、本人が決める
この設計図は、誰かに働くことを求めません。働きたい人が働き、その邪魔をしないのが原則です。
仕組み
- 性別ごとの人数目標・割合の義務付け(クォータ)は設けません。採用・昇進は、仕事の力で決めます。
- 「年収の壁」(配偶者控除、130万円の壁)は、案1の全員加入で消えます。働く時間を、制度の線に合わせて抑える必要がなくなります。
- 働くことを理由にした加点も、働かないことを理由にした減点も、制度にはつくりません。
4. 比べてみる
| 項目 | 日本(現状) | 提案 |
|---|---|---|
| 雇用区分 | 正規・非正規・派遣・アルバイト | なし(全員社員) |
| 報酬 | 月給・日給・時給が混在 | 時給に統一 |
| 賞与・退職金・有給 | 区分と時間で対象外になることがある | 働いた時間に比例して全員に |
| 社会保険 | 時間・年収の線で対象が分かれる | 1時間目から全員 |
| 最低賃金 | 都道府県別(1,085〜1,280円と報道) | 全国一律・生活費から算出 |
| 直前のシフト変更 | 割増の決まりなし | 72時間前を切ると25%増し、24時間前を切ると50%増し |
他国の制度は、出典を確認できたものから追記します。
5. 見込めない点・副作用
- 雇う側は短期の人を調整弁にできなくなります。繁閑の波が大きい業界(飲食・小売・イベント)では、コストが上がります。割増を払うか、業務の組み方を変えるかの選択になります。
- 人件費が全体で上がり、価格に転嫁されれば消費者の負担も増えます。
- 全国一律にすると、地方の小さな事業者に負担が寄ります。住居や設備の支援で補う必要があります。
- 時給制は、成果を測りにくい仕事(研究・創作など)に合いにくい面があります。その場合も、時間の記録と報酬を結びつける形を標準にします。
- 最低賃金を大きく上げたときの雇用への影響は、研究でも意見が分かれています。段階的に進める理由はここにあります。
6. 実現の道筋
- 雇用区分の廃止と、時間比例の賞与・社会保険は法律の改正(労働関係の法律と社会保険の法律)が必要です。
- 先に始められること:大企業から、時給換算の賃金表と、積立方式の賞与・退職金を公開する。
- 最低賃金の全国一律化と生活費からの算出は、審議会の仕組みの変更で進められます。
※経済政策は立場によって意見が分かれます。特定の政党や学派の主張には寄せず、利点と欠点を並べています。「提案値」は叩き台です。